しがない材料学徒。

しがない材料学徒。

誰も留年しないやさしい世界へ

R03年度 2021年度 材料の力学1 大問1の解説

こんにちは,harukiです。材料の力学の第二回中間試験が明日に迫っていると聞いて,多分はりの曲げの問題が出ると考えたので,したためていた去年度の試験問題の解答解説を急遽加筆して公開することにしました。ほとんど推敲していない故,お見苦しい点が多いと思いますが,何卒ご了承ください。

-----------------------------------------------------------------------------------

こんにちは。2021年度の材料の力学1の問題を解説していきます。間違いなどみつけたらここにコメントで書き込んでくださるとうれしいです。アカウントとか作らないでだれでも書けるようにしてあるので…

この記事は「ん~あんまり材料力学とくいじゃないかも」という人向けに書いたので,わかる人にとってはやや冗長な表現になっているかもしれません,ご留意ください。どんなに時間がなくてもこれはさすがに書いた方がいいかな?と思ったことは赤字で示したので,参考にしてみてください。また,2,3回検算をおこないましたが,完全な正確性は保証しかねますので,そこは宜しくお願いします。

大問1の画像です

略解

1(1)反力 \displaystyle\frac{w_0l}{2},反モーメント \displaystyle\frac{w_0l^2}{8}

(2)\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}のとき \displaystyle M(x) = \frac{w_0lx}{2}-\frac{w_0l^2}{8}-\frac{w_0x^2}{2}
 \displaystyle \frac{l}{2} \lt x \leq lのとき \displaystyle M(x) = 0

(3)\displaystyle \frac{3w_0l^2}{4a^3}

(4) \displaystyle \frac{7w_0l^4}{32Ea^4}

2.

3.

大問1 はりの曲げ

固定支持された片持ちばりに部分的に等分布荷重がかかった問題です。固定端が存在し,かつ等分布荷重が部分的なので,比較的複雑な計算を要し,息切れしない体力と正確な計算力が求められます。誘導が丁寧なのがうれしいです。

(1)反力と反モーメント

はりに働く力の総和と,任意の点におけるモーメントの総和は0になっています。そうでないと,はりはどこかに動いていったり,回転してしまいます。よってはり全体での力のつり合いの式とモーメントのつり合いの式を立てて,連立して解きましょう。未知数が反力と反モーメントの2つなので,これで十分です。

力とモーメントのつり合いの式を,反力をP,反モーメントをMとおいて立式していきます。力のつり合いの式は反力と等分布荷重による2つの力が釣り合っていることから立てられます。モーメントの方は,反力によるモーメント,等分布荷重によるモーメント,反モーメントの3つがありますが,固定端回りで立式すると反力のモーメントが無視できます。また,等分布荷重によるモーメントの大きさは,固定端から  \displaystyle x はなれた微小区間  \displaystyle dx にかかるモーメントを \displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}の範囲で寄せ集めると考えると\displaystyle \int^\frac{l}{2}_0 (w_0 dx) \cdot x = w_0\int^\frac{l}{2}_0 x dxです。

PとMは正になるように向きを定めました


以上よりつり合いの2式は

力のつり合い  \displaystyle \int^\frac{l}{2}_0 w_0 dx - P = 0
モーメントのつり合い  \displaystyle M - w_0\int^\frac{l}{2}_0 x dx = 0

となり,計算すると \displaystyle P = \frac{w_0l}{2},M = \frac{w_0l^2}{8}が得られます。

(2)BMDの計算

BMDを求めるときは,ある断面から片側だけを見るのが鉄則です。今回は座標xにある断面から左側だけを見て計算していきます。また,別解として後程紹介しますが,自由端から座標系を取り直すやり方も存在します。いずれにせよ\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}\displaystyle \frac{l}{2} \lt x \leq lで場合分けが必要になります。

その前に,各物理量に対して正の向きを定めておく必要があります。それぞれの正の向きは一般的に,モーメントは反時計回り,力は下向き,(全然使いませんが)等分布荷重は上向きと決められています。このように設定しておくと,SFDやBMD(あとででてきます)を求める時も混乱せずに済みます。これを一つにまとめたのが以下の図です。

サイヤ人の買い物の図

 

髪の毛が逆立っているように見えることから,僕は勝手に「サイヤ人の買い物」って覚えてました。ぽくないですか。

xでの曲げモーメントをM(x)とすると,M(x),固定端の反力によるモーメント,曲げモーメント,また等分布荷重によるモーメントの合計が釣り合っていればよいです。これを式に起こすと,

(i)\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}のとき

画像の中のきったねえ「そ」みたいな字は \displaystyle \xiのつもりです,ごめんね

座標xから左側でのモーメントのつり合いの式は
\displaystyle M(x) + \frac{w_0l^2}{8} - \frac{w_0l}{2}\cdot x + \int^{\xi=x}_{\xi=0} w_0\xi \; d \xi= 0となり,
これをM(x)について整理すると\displaystyle M(x) = -\frac{w_0x^2}{2}+\frac{w_0lx}{2}-\frac{w_0l^2}{8}なります。

(ii)\displaystyle \frac{l}{2} \lt x \leq lのとき

座標xから左側でのモーメントのつり合いの式は
\displaystyle M(x) + \frac{w_0l^2}{8} - \frac{w_0l}{2}\cdot x + \int^{\xi=x}_{\xi=x-\frac{l}{2}} w_0\xi \; d\xi = 0 となり,
これをM(x)について整理すると\displaystyle M(x) = 0となります。

以上(i)(ii)をまとめると,

\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}のとき \displaystyle M(x) = -\frac{w_0x^2}{2}+\frac{w_0lx}{2}-\frac{w_0l^2}{8}

\displaystyle \frac{l}{2} \lt x \leq lのとき \displaystyle M(x) = 0

となり,これが答えです。

(別解)自由端から新しく座標系をとるとき

以下のように座標系 x' をとります。

このとき, x' = l - x です。やることは先ほどの座標軸の時と変わりませんが,自由端の側だけをみていればいいので反力と反モーメントを最後まで考慮しなくてよいという大きな利点があります。これにより,M(x)と,(かかっている場合は)等分布荷重によるモーメントの2つだけを考慮すればよいので,ふつうにやるよりも格段に楽ができます。

(i)\displaystyle 0 \leq x' \leq \frac{l}{2} \; (\frac{l}{2} \leq x \leq l)のとき


\displaystyle M(x)の他にかかっている力はないので,M(x) = 0となります。

(ii)\displaystyle \frac{l}{2} \lt x' \leq l \; (0 \leq x \lt \frac{l}{2})のとき


座標x'から左側でのモーメントのつり合いの式は
\displaystyle M(x) + \int^{\xi=x'-\frac{l}{2}}_{\xi=0} w_0\xi \; d\xi = 0となり,
これを計算してM(x)について整理すると
\displaystyle M(x) = -\frac{w_0}{2}\left(x'-\frac{l}{2}\right)^2 となります。

ここで x' = l - x を代入すると,
\displaystyle M(x) = -\frac{w_0}{2}\left(l-x-\frac{l}{2}\right)^2= -\frac{w_0}{2}\left(\frac{l}{2}-x\right)^2
\displaystyle = -\frac{w_0}{8}\left(l-2x\right)^2 = -\frac{w_0}{8}(2x-l)^2となります。

実はこれは固定端の時の(i)を平方完成したものと同じです。よって,同じ答えを得られました。また,\displaystyle\frac{l}{2}の時の境界条件がやや異なりますが,どちらでもM \displaystyle\left(\frac{l}{2} \right) = 0となるので問題ないです。 

 

(3)はりに作用する最大応力

はりに作用する曲げ応力\sigmaは,曲げモーメントM,中立軸(断面の図心を通る軸,均一の素材で作られている場合は図心=重心になります)からの距離y,断面二次モーメントIとして,\displaystyle \sigma = \frac{My}{I}と表されます。これは部材のどの断面をみているか,また同じ断面でも中立軸からの距離によって変わりますが,断面が常に同じ形である場合Iは定数とみなせるので,積Myを最大にすることを考えればよいです。加えて,Myは独立に選べるので,それぞれの取りうる値の範囲を調べればMyの最大値がわかります。

まず,Mの取りうる範囲を考えてみましょう。(2)より\displaystyle \frac{l}{2} \lt x \leq lのときは0なので,残りの\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}のときを考えます。Mの様子を探るためにxについて平方完成をすると,

\displaystyle M = -\frac{w_0x^2}{2}+\frac{w_0lx}{2}-\frac{w_0l^2}{8}  = - \frac{w_0}{2}\left(x - \frac{l}{2}\right)^2

となり,これは頂点\displaystyle\left(\frac{l}{2},0\right)で上に凸の放物線なので,\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{l}{2}の範囲では最大値0,最小値\displaystyle -\frac{w_0l^2}{8}を取ります。よってM(x)全体では, \displaystyle -\frac{w_0l^2}{8} \leq M \leq 0の値を取ることがわかりました。

次にyの取りうる範囲を考えると,断面は一辺aの正方形となっており,中立軸は正方形を二分するようにちょうどまんなかに存在しているので,y \displaystyle -\frac{a}{2} \leq y \leq \frac{a}{2}の値を取ります。

最後にIを求めましょう。断面二次モーメントは断面領域をAとすると \displaystyle I = \int^{}_{A} y^2 \;dAと表せ,被積分式が \displaystyle yのみに依存しているので,横に細長く正方形を細かく切って積分すると求められます。領域の積分をy軸方向の積分に変換すると, \displaystyle dA = a \; dyで,積分範囲は \displaystyle -\frac{a}{2} \leq y \leq \frac{a}{2}なので,

\displaystyle I = \int^{}_{A} y^2 \;dA  = \int^{\frac{a}{2}}_{-\frac{a}{2}} y^2 \cdot a \; dy

となります。これを計算すると,\displaystyle I = \frac{a^4}{12}の値を取ることが分かり,これはaのみに依存する定数です。

これでパーツはそろったので,あとはうまく組み合わせましょう。\displaystyle -\frac{w_0l^2}{8} \leq M \leq 0 \displaystyle -\frac{a}{2} \leq y \leq \frac{a}{2}の範囲で最大になるMy\displaystyle M = -\frac{w_0l^2}{8} \displaystyle y =- \frac{a}{2}のときです。これはちょっと感覚的ですが, M \leq 0が確定しているので, Myもできるだけ負に大きく振ったほうが積が大きくなるからという理由からです。というわけで,\displaystyle I = \frac{a^4}{12}も加味すると,

\displaystyle \sigma_{max} = \left(-\frac{w_0l^2}{8}\right)\cdot \left(-\frac{a}{2}\right) \cdot \left(\frac{12}{a^4}\right) = \frac{3w_0l^2}{4a^3}とわかりました。

(4)はりのたわみ

はりのたわみときたら,たわみ曲線の基礎方程式

 \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2} = -\frac{M(x)}{EI}

からスタートしましょう。E,I,M(x)はそれぞれ弾性率(ヤング率),断面二次モーメント,曲げモーメントです。またyは部材の座標xにおけるたわみを表し,一階微分した\displaystyle \frac{dy}{dx}は座標xにおけるたわみ角を表します。

では,右端のたわみはどうやって求めればよいでしょうか。等分布荷重がかかっているところとかかっていないところで場合分けしてそれぞれのたわみ曲線を求めることで計算することもできますが,求めやすい地点と地点の変分を足し合わせていくことで求めることを考えてみましょう。今,  \displaystyle x = 0でのたわみを基準としたときの \displaystyle x = \frac{l}{2}でのたわみを \displaystyle d_{0 \rightarrow \frac{l}{2}} \displaystyle x = \frac{l}{2}でのたわみを基準としたときの \displaystyle x = lでのたわみを \displaystyle d_{\frac{l}{2} \rightarrow l}とします。以下の図を見てください。

はりがたわんで斜めになったので右端は \displaystyle l未満になるはずですが,たわみははりの長さに対して微小であることが暗黙の了解なので無視しています。この図を見ると, \displaystyle d_{0 \rightarrow \frac{l}{2}} = y \left(\frac{l}{2}\right)であること,また \displaystyle y(l) = d_{0 \rightarrow \frac{l}{2}} + d_{\frac{l}{2} \rightarrow l}となることがよくわかりますね。

つづいて,右側の青色の線で囲まれた直角三角形に着目してみましょう。

はりに対して \displaystyle x = [\frac{l}{2} , l]の区間では曲げモーメントがかかっていないことからはりはこの区間ではまっすぐなので, \displaystyle x方向への増分と \displaystyle x = \frac{l}{2}でのはりの傾き,つまり \displaystyle \left. \frac{dy}{dx}\right|_{x=\frac{l}{2}}がわかれば \displaystyle y方向の増分である \displaystyle d_{\frac{l}{2} \rightarrow l}が, \displaystyle d_{\frac{l}{2} \rightarrow l} = \frac{l}{2} \cdot \left. \frac{dy}{dx}\right|_{x=\frac{l}{2}}という具合にわかります。

以上の議論より,右端のたわみ \displaystyle y(l)はこのような式で求められることがわかりました。

\displaystyle y(l) = y\left(\frac{l}{2}\right) + \frac{l}{2} \cdot \left. \frac{dy}{dx}\right|_{x=\frac{l}{2}}

よって固定端から等分布荷重がかかっている末端までの区間\displaystyle x = [0, \frac{l}{2}]を満たす区間)でのyと,\displaystyle x = \frac{l}{2}での\displaystyle \frac{dy}{dx}が求まればこの問題を解くことが出来,これらは\displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}を2回積分すると,\displaystyle \frac{dy}{dx}yの順で得ることが出来ます。実際に積分すると,

\begin{eqnarray*}
\displaystyle \frac{dy}{dx} &=& \int \frac{d^2y}{dx^2} = \int -\frac{M(x)}{EI} \\ &=& -\frac{1}{EI} \int -\frac{w_0}{2}x^2+\frac{w_0l}{2}x-\frac{w_0l^2}{8} \; dx \\ &=&
-\frac{1}{EI}\left(-\frac{w_0}{6}x^3 + \frac{w_0l}{4}x^2 - \frac{w_0l^2}{8}x\right) + C_1
\end{eqnarray*}

積分不定性により積分定数が生まれるので,どこかしら自明な箇所を特殊解として取ってくる必要があります。今回の場合は,固定端でたわみ,たわみ角が生じないことから,x=0 \displaystyle\frac{dy}{dx} = 0が特殊解になり,これを代入するとC_1 = 0が得られます。したがって,

\begin{eqnarray*}
\displaystyle \frac{dy}{dx} =
-\frac{1}{EI}\left(-\frac{w_0}{6}x^3 + \frac{w_0l}{4}x^2 - \frac{w_0l^2}{8}x\right)
\end{eqnarray*}

(数式の表示の都合でうまく着色できなかったんですけど,書くべき大事なことです)

となります。再びこれを積分すると,

\begin{eqnarray*}
\displaystyle y &=& \int \frac{dy}{dx} \\ &=& -\frac{1}{EI} \int \left(-\frac{w_0}{6}x^3 + \frac{w_0l}{4}x^2 - \frac{w_0l^2}{8}x\right) \\ &=& -\frac{1}{EI}\left(-\frac{w_0}{24}x^4 + \frac{w_0l}{12}x^3 -\frac{w_0l^2}{16}x^2\right) + C_2
\end{eqnarray*}

となり,同様にx=0y=0が特殊解になり,これを代入するとC_2=0が得られます。したがって,

\begin{eqnarray*}
\displaystyle y &=&-\frac{1}{EI}\left(-\frac{w_0}{24}x^4 + \frac{w_0l}{12}x^3 -\frac{w_0l^2}{16}x^2\right)
\end{eqnarray*}

(ここも書くべき大事なことです)

となるので,あとは式に注意深く代入しましょう。

\begin{eqnarray*}\displaystyle y(l) &=& y\left(\frac{l}{2}\right) + \frac{l}{2} \cdot \left . \frac{dy}{dx}\right|_{x=\frac{l}{2}} \\ &=& \frac{w_0l^4}{128EI} + \frac{l}{2} \cdot \frac{w_0l^3}{48EI} \\ &=& \frac{7w_0l^4}{384EI}
\end{eqnarray*}

(大事なことです)

となりますが,Iは与えられている文字でないので, \displaystyle I = \frac{a^4}{12}を代入するのをお忘れなく。答えは \displaystyle \frac{7w_0l^4}{32Ea^4}となります。

大問2 熱応力

熱膨張による不静定問題です。熱膨張の類題を解いたことがあって,流れを把握していれば,難しすぎて解けないよと手が止まってしまう問題ではありません。こんな偉そうなこといってて本番一文字もかけなかったのは内緒

大問3 丸棒のねじり

それぞれの問題同士にあまり関連性がなく,どちらかというと小問集合のような感じの大問です。特に(2)は頻出なので,ぜひ押さえておきたいです。

(1)荷重による底面の変位

(2)トルクによる最大せん断応力

(3)丸棒に作用する最大の最大主応力

ICPC 国内予選 2022 参加記 (haruki視点)

こんにちは。harukiと申します。初めての参加記です。

国際大学対抗プログラミングコンテストへきささん白椿さん,私harukiのチームSpring Curveで出場し,298チーム中35位でアジア大会への切符をつかみ取りました!!!

ICPCって???

6~7問程度の問題が出題され、3時間の競技時間でどれだけ多く、早く、正確に解けるかを3人1組のチームで競います。問題の読解力、解法の考案力、そしてプログラミング能力が勝敗のポイントになります。

3分でわかるICPC | ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテストより引用しました。出題される問題の例はここから見られます

当日の流れ

ここからは当日の時系列順にどんな感じだったかお伝えしていきますね。

開始8時間前~2時間前

同じサークルに所属してる2年前から交流のある人たちと初めて会っておしゃべりしたり,今年はじめて出場する1年生たちのリハーサルの問題提出のお手伝いなどをしていました。リハーサル中の午前9時の時点で1年生チームの提出が0だったので,個別にdiscordのdmで連絡を取ってみたんですが,やはりかなり詰まっていたようで,ICPCの提出形式の難しさをひしひしと感じました。

開始2時間前~1時間前

授業を受けているキャンパスとは別のキャンパスで集合してみんなで1つの教室を借りて解くことになっていたので,電車で移動を開始します。東京の電車路線は,千葉の奥地に生息している私にとっては非常に難解で,乗りかえを1度間違えてしまったのですが,5分後に同じ行先の電車がすぐきて感動しました。さすが大都会東京ですね。このミスによる遅れはわずかなものでしたが,気分的に少しでも早く着きたかったので,少し値は張ってしまいますがつくばエクスプレスに乗ることで,無事予定した時間通りに集合場所の最寄り駅に着くことが出来ました。

開始1時間前

10個くらいある駅の出口に迷いながらもなんとか駅を脱出し,集合教室に到着しました。チームメンバーのお二方はすでに到着しており,PCの前で競プロの問題を眺めていて気合十分といった感じで,私も自然とやる気が湧いてきました。そこからは軽く雑談したり,方眼紙とか画用紙とかの考察道具の話で盛り上がったり,なにか生協でお菓子でも買おうかみたいな話をして,荷物番をかねて交替で飲み物等買い出しに行きました。

開始15分くらい前

先ほどの考察道具の話の中で「トランプもあったらいいよね」みたいな話が出ていたんですが,買い出しから帰ってきた白椿さんの手にはトランプが握られていました。行動力あるな~と思う反面トランプの問題なんてほんとに出るのかな…と思っていました (が,なんと実際に出題されました。もしかして事前に問題知ってた???)。その後はドキドキしながら問題が配信されるのを待ちます…

開始0分~6分

問題が配信されました。今年はこんな感じの問題セットでした。

例年開始してすぐはサーバーがへばってしまうので,今年もどうせ落ちるやろと思っていたらスムーズに始まってびっくりしました。解く問題はAtCoderのレートを加味して事前に私がA,白椿さんがB,へきささんがCと決めていたので,担当であるAに取り掛かります。ICPCは誤答時のペナルティが20分=1200秒とかなり重いので,くれぐれもミスをしないよう多少スピードを犠牲にして丁寧に実装することを心がけました。そのかいあって6分00秒で一発AC(正解)することができました。結構早いかなと思っていたんですが,このとき75位くらいだったので,みんな度胸があるなあと思っていました。同時に,この問題の提出コードが国内予選にて私が書いた最後のコードとなりました。(プログラミングコンテストとは???)

開始6分~20分

練習の時は,Aが終わったらCをへきささんと一緒に解いていたので,それにならってC問題に取り掛かりました。問題をひとしきり読み終えて,練習しても休んでもどんどん効果が増幅していくので,練習はできるだけまとめてガッツリやる,休息はできるだけ分散してこまめに取るというのが最適だろうなとわかりました。そこで \displaystyle N,M \leq 10^6という制約から,休憩を取る回数を全探索すればよいことがわかり,その旨をへきささんに伝えると,一瞬ですべてを理解したようで即座に実装に取り掛かり,開始20分くらいでACしてくれました。僕はへきささんに言われるまで,連続する奇数の和=平方数になることを完全に忘れていたので,自分一人では絶対に解けなかったと思うので本当に助かりました。

開始20分~30分くらい

白椿さんがB問題で苦戦していたようなので,みんなで解こうかという話になりましたが,白椿さんが「人数が増えてどうこうなる問題ではない」と言っていたので,そのままBはお任せしてへきささんと2人でD問題に行くことにしました。お恥ずかしいことに,D問題はこの後開始1時間30分くらいまでずっと誤読して別の問題を考えることになります(ゲートに並んでいるうち最前列にいる人たちの番号でソートして会場の入場列に並ばせる,というのをゲートに並んでいる人がいなくなるまで繰り返すのかと思っていました)。へきささんが入場希望者の列のうち必ず切らなければならないところの条件を教室の黒板を用いて共有してくれましたが,正直なところそれを咀嚼して理解するのがやっとで,その先の考察にはなかなか進めていませんでした。

開始30分~40分

白椿さんがサンプルを一致させてB問題を提出するもWA(誤答)だったようなので,私もB問題を考えることになりました。そこで,私の問題・解法の把握時間短縮と,白椿さん自身が説明することで何かミスに気付くかもしれない(ベアプログラミングってやつですね)のをかねて,問題と誤答だったコードの挙動を説明していただきました。案の定すぐに間違いに気づいたようで,即座に修正してACしてくれました。

開始40分~1時間20分くらい?

ABCの3問が解き終わったので全員でDに取り掛かります。この時点で確か45位くらいで,Dも少しずつ通されていたので,このDの出来でアジア大会に行けるか否かが決まると確信しました。考察は「必ず切らなきゃいけないところを切って,あとは自由に切れるはずだけど,切ってはいけないところが存在していて,そうなる条件がわからない」というところまで来ていたのですが,そこから先がなかなか浮かびません。へきささんが切ってはいけないところの条件を仮定し,一度提出しますがWAでした。

開始1時間20分くらい?~1時間50分

引き続き切ってはいけないところの条件を考え続けるのですが,隣接している要素の大小しか考えていなかったせいで迷走します(これでは解けない)。ここでようやく誤読に気が付き,今までの考察がほとんどパアになり愕然としました。しかしへきささんが愚直解法と比較することで,同じ区間で前にいる人の番号の最大値によって切れるか切れないかが判定できることに気が付いたようで,それを実装してもらって祈りながら提出して_______AC!!!。この時点で29位でした。

開始1時間50分~終了

Dを解き終わってあと70分ということで,残り時間は多少解かれているEとFのどちらかに全振りしようということになったので,チームみんなでEとFに目を通して,かっこ列っぽいねとすぐわかったEに賭けることに。配置を1つ構成すればよいということで,何かいい方法がないかを模索していましたが,私はこの後はひたすら時間を溶かし続けました。途中へきささんがGを見に行ったりしていましたが,大きな収穫はなくそのまま競技時間が終了します。

終了後

順位表をみて大学内1位で35位だったので,予選通過が確定し,やったねーという感じに。その後は感想会と晩御飯を兼ねてファミレスで食事をとりました。最初はサイゼリヤでやろうかとなり,最寄りの店舗に向かったのですが,まさかの満席でびっくりです。金曜の夜をなめてましたね。サイゼリヤは無理そうだったので,近くにあったロイヤルホストというところに初めて行ったのですが値段が高くてこれまたびっくりしました。

感想

普段の練習の時はA問題を解くだけ解いてあとは白椿さんとへきささんが活躍するという回がほとんどでかなり申し訳なかったので,本番ではC問題でわずかながら貢献できてよかったです。またこれはチームとは直接関係はないですが,所属しているサークルの新入生含むすべてのチームが1問以上正解できていたので,サークルから出場する全チームのコーチとの連絡役となった身としては,みんなでICPCにでてよかったな~としみじみ思いました。

とはいえ良かった点だけではなく,練習や本番を通して知識・実装力がお二方に対して圧倒的に劣っているなと感じるので,そこは今後の課題かなと感じています。

何はともあれ3回目のICPC出場にして初の予選通過!しかも今年はオンサイトで開催っぽいので,すっごく楽しみです!アジアに出場予定の方,よろしくお願いします!そして国内予選に出られたすべての方々,お疲れさまでした~!!!

実験レポートRTAのススメ

こんにちは。haruki / おるざと と申します。

大学生の皆さん,実験をやっていますでしょうか???実験の授業は単位の割に割かなくちゃいけない時間が見合わず,その癖に必修になっているクソ科目として悪名高いですが,時間がかかる主な原因は実験レポートを作成しなければならないことだと思います。

そこで,できるだけ時間をかけずに,そして楽しく実験レポートをできる方法である実験レポートRTAなるものをご紹介したいと思います。「タイム短縮のコツ」のところでレポートを書く際の小ワザなども掲載しているので,読んでる途中で誰がこんなバカなことやるかボケが,と思った方もぜひ最後まで見てみてください。

RTAって?

RTAとは,Real Time Attackの略称のことです。Real Timeは実時間,そしてTime Attackは時間を攻めるということなので,つまり「誰が一番はやくできるかみんなで競おうね」ということです。つまり,実験レポートRTAにおいては,同じ題目の実験レポートを書き上げた世界の誰よりも早く実験レポートを書き上げることが目標となります。

流れ

実験レポートRTAがどのようなものかわかったところで,実際にどのように行えばよいのかを時系列の流れに沿ってみていきましょう。

実験開始~実験終了

実験中はまじめに取り組みましょう。なにか操作をするときはそれの意味をよく考えたり,TAさんからなにか問われたら真剣に考察してみたりすることが大事です。どうせだらだらやってもすぐ帰れるわけでもないし,適当にやってるとあんまり記憶に残らず後で思い返すのがたいへんです。ここでキッチリやっておくと後々がかなり楽になります。

また,実験中はTAさんに何でも聞けるすごい時間です。TAさんは僕らよりいくつも先輩で,大体やさしく接してくれるし,いろんなことを知っています。実験のテキストに載ってることでわからないところや,学校生活(研究室のこととか)を聞いてみましょう。いろいろためになる情報を教えて下さると思います。

実験終了直後

終了直後は図書館に行って参考文献を借りてくるのがよいでしょう(学科によってはいらないのかな?)この時,ある程度知りたいことに目星をつけておくことが重要です。背景などは大体どの本の最初の方でもかけるので,むしろ考察の裏付けとなる部分の補強に使う参考文献を探すのに注力したほうがよく,重要なキーワードをすでに知っている場合は後ろの索引で該当ページを調べ,ほしい情報がのっているかをその場で確認するとなおよしです(大した情報ものっていない本を持って帰ったりまた持ってきたりするのはけっこうつらいです)。

実験終了直後~実験レポート提出2日前

入念に下準備をしたところで,いったん実験についてはわすれてしまって結構です。実験が終わって気の知れた友だちとご飯を食べに行くもよし,おうちに帰ってゆっくり休むもよしです。しばらく実験をしなくてよいという優越感に思う存分浸りましょう。

実験レポート提出2日前~実験レポート提出1日前

いっぱい寝ましょう。次の日は結構な体力を使うことになります。しっかりとした準備がよいレポートを生みます。また,ある程度の書き上げる時間を見積もっておきましょう(僕は9,12,15...など,3時間単位でざっくり概算しています)。

実験レポート提出1日前~見積もった時間を基に提出締め切りから逆算した時間

ここまでは普通に過ごしていて大丈夫です。学校などで友だちに会った際は実験レポートRTAを敢行する旨をそれとなく伝えてみましょう。「がんばってね」「応援してるぞ」などのやさしい言葉をかけてくれる人もいれば,「愚か者が」「間に合わないで留年しろ」などのちくちく言葉をかけてくるカスみたいな輩もいるので,今後誰と長くお付き合いしていきたいかを考えるよい判断材料になるでしょう。

見積もった時間を基に提出締め切りから逆算した時間~そこから1時間程度

さあ,現実と向き合う時がやってきました。泣こうが喚こうが,これからそう遠くない未来にやってくる締め切りにレポート作成が間に合わなければ留年に大きく近づくこととなります。その事実の重みを感じながら,レポートを書き始めましょう。実験中~実験直後に頑張っていれば,ある程度はつまることなく進めることができるはずです。

1時間経過~5時間経過

経験で言うと,この辺りはさっきまでのペースが嘘であると思うくらいにマジでダレます。YouTubeを見たり,Twitterを無駄に眺めたり,布団に入ってじっとしたりすることが多いです。やらなきゃいけないのになぜか先延ばしにするという,何の生産性もない時間になります。

5時間経過~締め切り2時間半前

ここら辺から,「あれ,このままだとヤバくね???」ということに気が付きます。やっと本格的に手を動かし始める時間ですが,実験レポート作成というのは1週間(これも学科によって違うかも)も時間が設けられている課題ですから,数時間考えた程度では太刀打ちできません。何を書けばいいのかよくわからないまま時間がどんどん過ぎていきます。

締め切り2時間半前~締め切り

「このままでは留年しちゃう,でもなに書けばいいかわからない!どうしようどうしようどうしよう!」という考えで頭がいっぱいという極限状態に陥り,脳みそが覚醒します。すべてのわからなかったことがわかり,森羅万象を解き明かすことが出来るのもこの時間です。これまでわからないなりにもある程度時間をかけていれば,バラバラだった知識が点と点を結ぶようにつながり,問われていることに対する答えを頭の中で高速に,そして論理的に構築することができるはずです。

またこのあたりになると,残り工程それぞれにかかる時間をかなり正確に見積もることが出来ているはずですが,たまに見積時間と進捗がずれてしまうことがあります。しかし今は締め切り直前,ちゃんと後ろの方でリカバリーできるので,あきらめずに突き進みましょう。完全な持論ですが,締め切りまでの時間を \displaystyle tとおくと,その時に出せるパフォーマンスは \displaystyle \frac{1}{t}だと思っています。(これだと, \displaystyle \lbrack 0, 任意の開始時間 t_{start} \rbrack積分した時に正の無限大に発散してしまい締め切り前ならいつから始めても終わることになってしまいますが…)

締め切り~締め切り終了後

お疲れさまでした。いったんここで一区切りです。このあと授業がなければ,仮眠をとってもよいでしょう。不運にも授業があるならば,睡眠と同時並行で授業をうける「睡眠学習」によって代替できます。演習(学科によって(ry もわすれないようにしてください。演習問題は労力に見合わず実験レポートと同程度の配点を占めるらしいのでここも入念にやりましょう。

タイム短縮のコツ

自分に合ったチャートを練ろう

チャートとは,「レポート完成までにどの項目をどの順番で書き上げるか」のことです。例として僕は背景,方法,結果,考察,結論,参考文献,課題の7項目(学科 (ry があるときは以下のチャートを組んでいます。

考察をチラ見→方法→結果→考察→課題→背景→結論→参考文献

いきなり考察を見るのは,今自分が解くべき問題が何であるかを明確にするためです。その後方法や結果を書いている途中で問題に対する答えのアプローチが浮かぶことも多いです。

また,背景を後半に持ってくるのは,結果を整理して考察を行ってからの方がある程度この実験で何をしていたのかがわかって書きやすいからです。実験レポートで一番最初に章立てされているからと言って,自分で考えて実験しようと思ってやっているわけでもない学生実験においてこれを最初に書くのはなかなか難しいんじゃないかと思っています。

もちろんチャートは自分好みに考えて組んだ方がいいと思うし,僕もまだ模索中です。

数式を書く際はtex表記で

皆さんはwordで数式を入力する時どうやってやっていますか?なんかテンプレ―トみたいなやつ(ロ/ロみたいな)を使ってもいいですが,tex(てふ)表記というのが便利です。例えば分数 \displaystyle \frac{y}{x}は\frac{y}{x}と入力すればマウスとキーボードを行ったり来たりすることなくキーボード上だけで完結することが出来ます。キーボードとマウス間を往復する動きってめんどうだし,かなりのタイムロスなんですよね。これが出来るようになると,数式入力の時のストレスがぐっと軽減されると思います。入力したい数式の打ち方がわからない場合は「tex 積分」などで調べるといっぱい出てくるのでそれらを参考にしながら入力してみましょう。

頻繁に使う「打つのが面倒くさい言葉」はソフトの力を借りよう

実験レポートでは同じ単語がいっぱい出てくることが良くあります。でもそのたんびに「ヘキサシアニド鉄(III)カリウム」とかって打ってたら疲れちゃいますよね。そこでクリップボード(Ctrl + Cで保存したものを保持しておくところ)の履歴を保存してくれるソフトを用いて,いくつかのよく使う単語を素早く打てるようにしています。このソフトがべんりで,おすすめです。

Clibor | クリップボード履歴ソフト「Clibor」の公式サイト

ショートカットキーをいっぱい使おう

ショートカットキーは神です。Ctrl + C,Ctrl + Vでコピー&ペーストをはじめとしたショートカットキーはかゆい所に手が届く非常に便利な機能です。参考までにあんまり知られてないかもだけど僕が便利だと思っているショートカットキーを紹介しておきます。

Excelで Ctrl + Shift + 方向キー  データがある範囲の末尾まで選択

Wordで Alt + Shift + -キー(伸ばし棒ですね) 数式を入力するところを出す

Wordで Ctrl + E,R,L  選択している行を中央揃え/右揃え/左揃えにする

ウィンドウを選択した状態で Windowsキー + 方向キー  ウィンドウを画面の片側に寄せます 何かを見ながら作業をしたいときにべんり

僕もまだ大して使いこなせていませんが,知れば知るほど操作が減って楽になるとおもいます。

キー入力をカスタマイズしちゃおう

Backspaceキーとかってホームポジション(キーボードの手がおかれている位置)から遠くないですか???なのでキー入力を自分好みに改造できるソフトを導入しています。

【AutoHotkey】キーに別の機能(キー)を割り当てるソフトの使い方 | ナポリタン寿司のPC日記

なれるまでに結構な時間がかかるので実験レポートRTA直前に使い始めるのはおすすめしませんが,慣れればこれ以上ないまでに快適です。僕は「無変換キー + O」でBackspace,「無変換キー + J, I, ",", L」で方向キー←↑↓→を入力できるようにしています。ただし,先ほども言いましたが慣れるまでの間は逆に少し効率が下がってしまうので,注意が必要です。

実験レポートRTAのいいところ

実験レポートがエンターテインメントと化す

本来実験レポートは苦痛なものですが,RTAという競技性を持たせることでそれを中和することができます。他にも,LiveSplitというゲームのRTAなどの時間計測に使われるソフトを導入して士気を挙げたり,テーマをあらかた把握しておき,これからなにをするのかが一目でわかるサムネイルを制作して注目を浴びたりするなどして少しでも楽しくできるような工夫をしたりしていました。

時間計測ソフトのスクショ。お気に入りのフォントや背景でモチベアップ

実際に作ったサムネイル。時間がかかって大変でしたが,なかなか楽しいです。
面倒な実験レポートに多くの時間を割かずにすむ

かけている時間が実質1日以下なので,効率が良いです。

実験レポートRTAのわるいところ

身体・精神共に負担が大きい

12時間近くPCに向き合いっぱなしなので,体が大変なことになります。定期的に椅子から立ち上がって体をほぐすなどしてメンテナンスを怠らないようにしましょう。腰が死にます。

他にも,なにもわからないのに時間だけがすぎていったり,眠いのに眠れないという状況は結構メンタルにくるものがあります。この記事を読んでいる方の中には間に合わなければ留年に王手という極限状態がこわくてできないよという方もいるでしょう。初めのうちは,締め切り3日前から着手し始めるなどして少しづつ慣らしていき,その後開始時間を遅らせていくというのがよいでしょう。

他の人に頼ることが多い

周りのみんなより始めるのが遅いので,助けてもらう側に回りがちです。他の授業の課題でたくさん活躍したり,自分がわかっていることを積極的に教えたりしましょう。それもかなわない場合は,必ず感謝の言葉だけでも忘れないようにしましょう。いくら伝えても伝えすぎということはありません。いっぱい感謝しましょう。

ギリギリから始める癖がついてしまう

1度間に合うか間に合わないかの瀬戸際から初めて間に合ってしまうと,下手に成功体験として脳に焼き付いてしまい,報酬系(うれしいを感じる脳みその部分)が破壊されてしまいます。その結果何が起こるかというと,実験レポートに限らず多くの課題をギリギリから始めて,(不運にも)間に合ってしまい再び成功体験として脳に刻まれるという負のサイクルが形成されてしまいます。ろくでもないですね。

まとめ

やらないほうがいいです。

R03年度 2021年度 量子力学の解説

こんにちは。2021年度(R03年度)の量子力学の解説をやっていきます。

問題を持っていない方向けの閲覧およびダウンロードのリンクはこちら

最初に,この記事では理解しやすくしたり記憶のとっかかりをつくりやすく(忘れちゃってもその場で自分で導出できるように)するためにできるだけ詳細な説明を書きますが,説明がよくわかんない or 丸暗記でもいけるよ という方は,無理に理解しようとせずに流れをさくっと覚えてしまうことをオススメします。多分そっちの方が効率がよいと思います。

あと,めちゃくちゃいっぱい書いたので結局試験の時なに書けばええねんって感じになっちゃったんですけど,ここをうまくつないで書けば説明として抜けがなく点数がもらえそうだな,と思ったところは赤字にしているので,参考にしてみてください。

略解

1(1) \displaystyle 5800K (2) \displaystyle 1.10 eV(3) \displaystyle 0.727nm

2(1) \displaystyle \left(-\frac{\hbar^2}{2m} \frac{d^2}{d x^2} +\frac{1}{2}m \omega^2 x^2\right)\Psi = E \Psi (2)  \displaystyle a = \frac{m\omega}{2\hbar}
(3)  \displaystyle E_0 = \frac{\hbar \omega}{2} (4) \displaystyle \left(\frac{2a}{\pi}\right)^\frac{1}{4}または \displaystyle \left( \frac{m \omega}{\pi \hbar}\right)^{\frac{1}{4}}
(5) \displaystyle \langle x \rangle = 0, \langle x^2 \rangle = \frac{\hbar}{2m\omega}

3(1) \displaystyle 6.21 \times 10^{-21} J (2)  \displaystyle 520 m/s

4(1) \displaystyle 1.16 \times 10^{-26} kg (2) \displaystyle 1.40 \times 10^{-46} kg \cdot m^2
(3)  \displaystyle \left(2l + 1\right) \; exp\left(-\frac{l\left(l+1\right)\hbar^2}{2Ik_B T}\right)(4)  \displaystyle 7.3

5  \displaystyle \langle \frac{1}{r} \rangle = \frac{Z}{n^2 a_0}

大問1 小問集合

使う式を知っていれば他の大問とくらべて軽めの計算で解ける問題ばかりなので,しっかり得点しておきたいところです。

(1)ウィーンの変位則

プランクの熱放射式より導かれる黒体放射スペクトルのピーク波長に関する関係式にウィーンの変位則というものがあり,これは物体の放つ光のスペクトル \displaystyle \lambda_m \lbrack m \rbrack,物体の温度 \displaystyle T \lbrack K \rbrackとして以下の式で表されます。

 \displaystyle \lambda_m T = 2.90 \times 10^{-3} \lbrack m \cdot K \rbrack

問題用紙の上の方にも書いてあるやつですね。黒体放射を始めたとき,温度が同じならばどのような種類の物質でも同じ色で光るということをいっています。

接頭語に気をつけて \displaystyle \lambda_m = 500 \lbrack nm \rbrackを代入すると,

 \displaystyle 500 \lbrack nm \rbrack \times T \lbrack K \rbrack = 500 \times 10^{-9} \lbrack m \rbrack \times T \lbrack K \rbrack = 2.90 \times 10^{-3} \lbrack m \cdot K \rbrack

となり, Tについて整理すると, \displaystyle T = 5.80 \times 10^3 \lbrack K \rbrackと分かります。

(2)光電効果

光子のエネルギー E,仕事関数 W,とびでてくる電子の運動エネルギーの最大値 K_{max}とすると,以下の式が成り立ちます。

 \displaystyle E - W = K_{max}

理由を知りたい人は,以下の記事がわかりやすくてよかったです。

【原子物理】光電効果とは?仕事関数の式と光量子仮説をわかりやすく解説 - 受験物理テクニック塾

また,光子のエネルギーは,波長 \lambda,光速 c,振動数 \nuとして,以下のように表せます。

 \displaystyle E = h \nu = \frac{h c}{\lambda}

よって,エネルギー Eは以下のように計算できます。

 \displaystyle E = \frac{6.626 \times 10^{-34} \lbrack J \cdot s \rbrack \cdot 3 \times 10^8 \lbrack m / s \rbrack}{500 \times 10^{-9} \lbrack m \rbrack} = 3.975 \times 10^{-19} \lbrack J \rbrack

ここで,問題文で与えられている仕事関数の単位と光子のエネルギーの単位が異なるので, eVで統一することにしましょう。いま, \displaystyle 1 \, \lbrack eV \rbrack = 1.60 \times 10^{-19} \lbrack J \rbrackなので(問題文の上の方に書いてあります),

 \displaystyle 3.975 \times 10^{-19} \lbrack J \rbrack = 2.484 \lbrack eV \rbrack

と単位を変換できます。よって,仕事関数の式 \displaystyle K_{max} = E - Wに代入すると,

 K_{max} = 2.484 \lbrack eV \rbrack - 1.38 \lbrack eV \rbrack = 1.10 \lbrack eV \rbrack

となり,これが答えです。

(3)ド・ブロイ波

エネルギー \displaystyle E,質量 \displaystyle m,光速 \displaystyle cとして,特殊相対性理論より \displaystyle E = mc^2が成り立ちます。よって, \displaystyle m = \frac{E}{c}であるので,運動量 \displaystyle p,粒子の速度 \displaystyle vとすると, \displaystyle p = mv = \frac{E}{c^2} \, c = \frac{E}{c}です。

これは振動数 \displaystyle \nu,光子のエネルギー \displaystyle Eとして成り立つ光子のエネルギーに関する式 \displaystyle E = h \nuより, \displaystyle p = \frac{E}{c} = \frac{h \nu}{c} = \frac{h}{\lambda}と変形することが出来ます。

こうしてできた式を \displaystyle \lambdaについて整理すると,ド・ブロイの関係式

 \displaystyle \lambda = \frac{h}{p}

になります。

ここに,  \displaystyle p = mvを代入すると, \displaystyle \lambda = \frac{h}{mv}となり,いま問題文より  \displaystyle v = 10^6 \lbrack m / s \rbrack,また運動しているのは自由電子であることから  \displaystyle m = m_e = 9.11 \times 10^{-31} \lbrack kg \rbrackが成り立つので,代入すると

 \displaystyle \lambda = \frac{6.626 \times 10^{-34} \lbrack J \cdot s \rbrack}{9.11 \times 10^{-31} \lbrack kg \rbrack \cdot 10^6 \lbrack m / s \rbrack}

 \displaystyle = 7.273 \times 10^{-10} \lbrack m \rbrack = 0.727 \lbrack nm \rbrack

となり,これが答えです。

大問2 一次元調和振動子

ばねにつながれた物体のような挙動をする調和振動子の問題です。毎年井戸型ポテンシャル or リング型 or 一次元調和振動子 のどれかに関するシュレディンガー方程式が必ずと言っていいほど出題されている気がします。

計算が煩雑で結構めんどくさいので,(1)だけ解答して他の大問に力を注いでもいいかもしれません。

(1)シュレディンガー方程式の立式

シュレディンガー方程式とはエネルギー演算子 \hat{H}波動関数 \Psi,エネルギー固有値 Eの間に成り立つ \hat{H} \Psi = E \Psiという式のことです。この式は,エネルギー演算子波動関数に左から作用させる,つまり波動関数に「ねえねえ,お前のエネルギー固有値っていくつなん?」と質問すると,「こんくらいだよ」と質問の答えであるエネルギー固有値波動関数がかかったものが返ってくる,と考えると多少理解しやすいと思います。

エネルギー演算子 \hat{H}は, \displaystyle \hat{H} = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} + V(x)で表され,ポテンシャル \displaystyle V(x)の方は状況によって異なります。今回の場合は復元力 \displaystyle F = -m\omega^2xがはたらいているので,座標 xでの復元力 \displaystyle -m\omega^2xに逆らって幅が dxと微小である区間 \displaystyle \lbrack x,x+dx\rbrackの間を移動すると得られるポテンシャル m\omega^2x dx \displaystyle \lbrack0,x\rbrackで足し集めると考えると, \displaystyle V(x) = \int_0^x m\omega^2x dx という式が立てられ,計算すると  \displaystyle V(x) = \frac{1}{2}m\omega^2x^2となります。ここらへんの説明はよくわかんなかったら一次元調和振動子のときは  \displaystyle V(x) = \frac{1}{2}m\omega^2x^2だけ頭に入れとけばだいじょうぶです。

よって答えは \displaystyle \left(-\frac{\hbar^2}{2m} \frac{d^2}{d x^2} +\frac{1}{2}m \omega^2 x^2\right)\Psi = E \Psi となりました。正直,いきなり答えを書いちゃっても点数が入ると思いますが,こわいので一応 一次元調和振動子の時のポテンシャルについて言及しておきましょう。

(2)(3)固有関数とエネルギー固有値の導出

とりあえず,基底状態の固有関数が与えられたので,シュレディンガー方程式に代入して計算をすすめてみましょう。

波動関数 \displaystyle \Psi基底状態の固有関数\displaystyle \Psi_0 = A exp\left(-ax^2\right)を代入すると,エネルギー固有値 E基底状態のエネルギー固有値 E_0になり,シュレディンガー方程式は以下のようになります。

 \displaystyle \left(-\frac{\hbar^2}{2m} \frac{d^2}{d x^2} +\frac{1}{2}m \omega^2 x^2\right)A exp\left(-ax^2\right) = E_0 A exp\left(-ax^2\right)

左辺は
 \displaystyle -\frac{\hbar^2}{2m} \frac{d^2}{d x^2}A exp\left(-ax^2\right) +\frac{1}{2}m \omega^2 x^2A exp\left(-ax^2\right)
と展開でき, \displaystyle -\frac{\hbar^2}{2m} \frac{d^2}{d x^2}A exp\left(-ax^2\right)を合成関数の微分を用いて計算すると,

 \displaystyle -\frac{\hbar^2}{2m} \left(\frac{d^2}{d x^2}A exp\left(-ax^2\right)\right) \\
 \displaystyle=-\frac{\hbar^2 A}{2m}\left(\frac{d}{dx}\left(-2ax\right)exp\left(-ax^2\right)\right) \\
 \displaystyle =\frac{\hbar^2 A a}{m}\left(\frac{d}{dx}x \, exp\left(-ax^2\right)\right) \\
 \displaystyle =\frac{\hbar^2 A a}{m}\left(exp\left(-ax^2\right)+x \cdot \left(-2ax\right)exp\left(-ax^2\right)\right) \\
 \displaystyle =\frac{\hbar^2 A a}{m}\left(exp\left(-ax^2\right) -2ax^2 exp\left(-ax^2\right)\right) \\
 \displaystyle =\frac{\hbar^2 A a}{m}\left(1-2ax^2\right) exp\left(-ax^2\right)

となります。

この計算結果をもとのシュレディンガー方程式にもどすと,

 \displaystyle \frac{\hbar^2 A a}{m}\left(1-2ax^2\right) exp\left(-ax^2\right) +\frac{1}{2}m \omega^2 x^2A exp\left(-ax^2\right) \\ = E_0 A exp\left(-ax^2\right)

となります。 \displaystyle A exp\left(-ax^2\right)で割ったり分母をはらったりして整理すると,

 \displaystyle 2\hbar^2a\left(1 -2ax^2\right) + m^2\omega^2x^2 = 2 mE_0

となり,大分すっきりしました。ここで, \displaystyle x^2でくくれる項と定数項をわけ,左辺にあつめて右辺を 0にしておきます。

 \displaystyle \left(m^2\omega^2-4a^2\hbar^2\right)x^2 + \left(2\hbar^2a-2mE_0 \right) = 0

このようにしてできた式の大元はシュレディンガー「方程式」であることから,この式はすべての \displaystyle xについて成り立つことが必要なので,どのような \displaystyle xについても右辺が 0になるために, \displaystyle x^2でくくった項の係数と定数項の2つがそれぞれ 0になることが必要です。この条件より2つの式

 \displaystyle m^2\omega^2-4a^2\hbar^2 = 0, 2\hbar^2a-2mE_0 = 0

を得られて,これは2つの未知数 a, E_0を知るのに十分です。解くと, \displaystyle a = \frac{m\omega}{2\hbar},E_0 = \frac{\hbar \omega}{2}となります。

(4)規格化

シュレディンガー方程式 \displaystyle \hat{H}\Psi = E \Psiをよく観察してみると,ある \displaystyle \Psiを定数倍したもの \displaystyle A\Psiシュレディンガー方程式の解になりうることがわかり,このようにして作ることが出来る数学的に方程式を満足する解は無数に存在します。しかし,この無数の解の中で実際に現実世界のルールを物理的に満たす波動関数は限られていて, Aは特定の値しかとりえません。この Aを算出することを規格化と呼びます。

この「現実世界のルール」を数式に落とし込んだものである規格化条件というものが存在し,以下の式で表されます。

 \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \left| \Psi(x) \right|^2 dx = 1

これは粒子が存在しうる範囲,つまり \displaystyle \lbrack -\infty ,\infty \rbrack の間に粒子は必ず存在するという制約から,この範囲での座標 \displaystyle xにおける粒子の存在確率である, \displaystyle xの関数としての波動関数 \displaystyle \Psi(x)の絶対値二乗 \displaystyle \left| \Psi(x) \right|^2をすべて足し集めると全事象の確率である1になるということを背景に立てられる式です。

この規格化条件を用いれば波動関数の係数部分である \displaystyle Aを求めることができます。実際に規格化条件における \displaystyle \Psi(x) \displaystyle \Psi_0を代入し規格化してみると,

 \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \left| \Psi(x) \right|^2 dx
 \displaystyle = \int_{-\infty}^{\infty} \left|A \, exp (-ax^2)\right|^2 dx
 \displaystyle = \int_{-\infty}^{\infty} A^2 \, exp(-2ax^2) dx
 \displaystyle = A^2 \int_{-\infty}^{\infty} exp(-2ax^2) dx = 1

ここまで変形できれば,問題用紙の上の方にある \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} exp(-ax^2) dx = \sqrt{\frac{\pi}{a}}の式を適用することが出来ます。この式の \displaystyle a \displaystyle 2aを代入すると(文字がかぶってて混乱しそうですが, a 2a にまるまる置き換えるイメージです), \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} exp(-2ax^2) dx = \sqrt{\frac{\pi}{2a}}となり,規格化条件の式は以下のようになります。

 \displaystyle  A^2 \int_{-\infty}^{\infty} exp(-2ax^2) dx = A^2 \sqrt{\frac{\pi}{2a}} = 1

 \displaystyle Aについて解くと, A = \pm \left(\frac{2a}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}となりますが,どちらの値も波動関数的には同じ意味を持ち,片方は必要ないので慣習にならって A \gt 0の方を残せばよいです。答えは「 \displaystyle A = \left(\frac{2a}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}である」と書けば, \Psi_0を規格化したことになります。定数 Aをに数値を代入した波動関数をかいたり, aに(2)の結果を代入したものをかいたりしてももちろんokです。その場合の答えは \displaystyle \left( \frac{m \omega}{\pi \hbar}\right)^{\frac{1}{4}}です。

(5)位置及び位置二乗の期待値計算

一般に,ある物理量 \omegaの期待値 \langle \omega \rangleは,ブラ・ケット表記で \omegaの観測量を表す演算子 \hat{\Omega}を用いて \langle \Psi | \hat{\Omega} | \Psi \rangleと表されます。これを積分になおすと波動関数 \Psi複素共役 \Psi^*を用いて, \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{\Omega} \Psi dxと表せます。この小問では, xおよび x^2の期待値,つまり \langle x \rangleおよび \langle x^2 \rangleを問われているので,具体的には \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{x} \Psi dxおよび \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{x^2} \Psi dxを求めればよいということになります。実際に \langle x \rangleの方から求めてみましょう。

 \langle x \rangle = \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{x} \Psi dx

 \Psi^* \Psi複素共役ですが,今回は \Psiが実数関数なので, \Psi = \Psi^*= A \, exp(-ax^2)が成立します。また \hat{x}は, xで定義され, \hat{x} = xが成り立つので,そのまま代入してあげましょう。

 \displaystyle \langle x \rangle = \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{x} \Psi dx = \int_{-\infty}^{\infty} A \, exp(-ax^2) \cdot x \cdot A \, exp(-ax^2) dx
 \displaystyle = A^2 \int_{-\infty}^{\infty} x \, exp(-2ax^2)

ここで,被積分関数は,奇関数 xと偶関数 \displaystyle exp(-2ax^2)の積となっていて,被積分関数全体としては奇関数になっています。これに加え,積分範囲が \displaystyle \lbrack -\infty , \infty \rbrack x=0について対称になっているので,積分するまでもなく 0であることがわかります。よって \langle x \rangle = 0であることがわかりました。

 \langle x^2 \rangleについても考えましょう。 \hat{x^2} = x^2が成り立つので,先ほどと同様の議論で

 \displaystyle  \langle x^2 \rangle = \int_{-\infty}^{\infty} \Psi^* \hat{x^2} \Psi dx
 = \int_{-\infty}^{\infty} A \, exp(-ax^2) \cdot x^2 \cdot A \, exp(-ax^2) dx
 \displaystyle = A^2 \int_{-\infty}^{\infty} x^2 \, exp(-2ax^2)

までは計算することが出来ます。あとは,問題用紙の上の方にある式 \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} x^2 \, exp(-ax^2) dx = \frac{1}{2a} \sqrt{\frac{\pi}{a}} a 2aを代入してあげれば, \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} x^2 \, exp(-2ax^2) dx = \frac{1}{4a} \sqrt{\frac{\pi}{2a}}が成り立つので,

 \displaystyle = A^2 \int_{-\infty}^{\infty} x^2 \, exp(-2ax^2) =A^2 \cdot \frac{1}{4a} \sqrt{\frac{\pi}{2a}}

とわかり, A, aは(2)(4)より既知なので代入することによって値が求められます。答えは \displaystyle \frac{\hbar}{2m\omega}となるはずです。

 

ここまでは量子論的なアプローチで期待値解釈をしましたが,古典的なアプローチでの期待値解釈も紹介しておきます。忘れちゃったり不安になったりしたときに思い出すきっかけになったら幸いです。結果は一致しますが,厳密にあってるかはわからないので,解答用紙にはそれとなく「期待値はこうこうこんなふうに表されるので~」みたいな感じで古典的アプローチについては明記しないほうが無難かなと思います。

 

そもそも,あることがらに関する期待値は,取りうるすべての事象について, \displaystyle (ある事象の値) \times (その事象が起こる確率)の総和と等しいです。例えば,6面それぞれに 1,1,1,2,2,5と書き込まれているサイコロを振った時の出る目の期待値 Xは,以下のように求められます。

 \displaystyle X = 1 \times \frac{3}{6} + 2 \times \frac{2}{6} + 5 \times \frac{1}{6} = 2

これを踏まえて, x座標の期待値を考えてみましょう。いま,座標 xの付近の区間 dxの微小区間 \lbrack x, x + dx \rbrackを考え,「座標 xに粒子が存在する事象」に着目します。ここの事象の値(知りたいことがらに対するこの場所での値,いまは座標です)は xになりますよね。そして,座標 xに粒子がいる確率は(4)規格化でも触れましたが \displaystyle \left| \Psi(x) \right|^2 で表されます。よって,座標 xにおける \displaystyle (ある事象の値) \times (その事象が起こる確率)は, \displaystyle x \, \left| \Psi(x) \right|^2になります。

この値を, x座標として取りうるすべての事象,つまり \displaystyle \lbrack -\infty , \infty \rbrackの範囲のすべての xについて足し合わせれば x座標の期待値となります。よって求める期待値 \langle x \rangleは, \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} x \, \left| \Psi(x) \right|^2 dxとなり,これは先ほどの求めるべき式と一致しますね。

大問3 二原子分子の並進エネルギー

使う式を覚えていれば比較的簡単に解ける箇所なので,ぜひとも得点したいところです。

(1)一分子の運動エネルギー

いかなる種類の粒子にも,自由度1つ当たり \displaystyle \frac{1}{2} k_B Tのエネルギーが配分されるという法則があります。ここで, k_Bボルツマン定数 Tは粒子の絶対温度です。この法則をエネルギー等分配則とよびます。

並進というのは,粒子の重心を目的二原子分子の並進の自由度は3なので,並進の自由度によって配分されるエネルギーは \displaystyle \frac{3}{2} k_B Tとなり,これが一分子の運動エネルギーの平均値に値します。この一分子の運動エネルギーの平均値を \displaystyle \overline{K}とおくと,ボルツマン定数 \displaystyle k_B = 1.38 \times 10^{-23} \lbrack J / K \rbrackであり,問題条件より \displaystyle T = 300 \lbrack K \rbrackなので,

 \displaystyle \overline{K} = \frac{3 \cdot 1.38 \times 10^{-23} \lbrack J / K \rbrack \cdot 300 \lbrack K \rbrack}{2} = 6.21 \times 10^{-21} \lbrack J \rbrack

となり, \displaystyle  6.21 \times 10^{-21} \lbrack J \rbrackが答えです。

(2)二乗平均速度

ある粒子の運動エネルギー \displaystyle Kは粒子の質量 \displaystyle m,粒子の速度 \displaystyle vとして \displaystyle K = \frac{1}{2} m v^2と表せ,この中に \displaystyle  v^2が含まれているので,(1)で求めた \displaystyle \overline{K}をなんとかいじくって二乗平均速度 \displaystyle \langle v^2 \rangleを出したいという気持ちになります。

「あれ,平均なのになんで問題文の根号の中の値は \overline{v^2}じゃなくて期待値 \langle v^2 \rangleなの?」と思った人もいるかもしれませんが,実は,この場合は二乗速度の平均値と期待値はおなじものを指しています。というのも,「平均値 = すべての粒子の二乗速度の総和を粒子の数で割って均一にならしたもの = 多数粒子の中から無作為に粒子を一つとってきて二乗速度を測定する,という操作を十分な(データの偏りがなくなるくらいたくさんの)回数繰り返してその平均値をとったもの = 期待値」という風に言い換えることができるんですね。ということで, \displaystyle \overline{v^2}は, \langle v^2 \rangleと同値です。またこの議論は(1)の運動エネルギーにも適用でき, \displaystyle \overline{K}は, \langle K \rangleと同値です。よって,

 \displaystyle \overline{K} = \langle K \rangle

が成り立ちます。また,運動エネルギーの関係式より,

 \displaystyle K = \frac{1}{2} m v^2

です。これを \displaystyle \langle K \rangleに代入すると, mが粒子によってばらつきがなく定数とみなせることから期待値の線形性(この場合は, \displaystyle \langle 2K \rangle = 2 \, \langle K \rangle, \langle 3K \rangle = 3 \, \langle K \rangle という風に,任意定数 aについて \displaystyle \langle aK \rangle = a \, \langle K \rangleが成り立つこと)より以下のように変形できます。

 \displaystyle \langle K \rangle = \langle \frac{1}{2} m v^2 \rangle = \frac{1}{2} m \langle v^2 \rangle

以上の議論をまとめると,以下の式が成り立ちます。

 \displaystyle \overline{K} = \langle \frac{1}{2} m v^2 \rangle = \frac{1}{2}m \langle v^2 \rangle

これを \displaystyle \langle v^2 \rangleについて整理し,ルートを取ると,

 \displaystyle \sqrt{ \langle v^2 \rangle} = \sqrt{\frac{2 \overline{K}}{m}}

となります。ここまでくれば,これに(1)の答えと \displaystyle m = 4.6 \times 10^{-26} \lbrack kg \rbrackを代入してあげれば,

 \displaystyle \sqrt{ \langle v^2 \rangle} = \sqrt{ \frac{2 \cdot 6.21 \times 10^{-21} \lbrack J \rbrack}{4.6 \times 10^{-26} \lbrack kg \rbrack}} = 5.2 \times 10^2 \lbrack m / s \rbrack

となります。次元の変換でちょっとびっくりしてしまうかもしれませんが,仕事の式 \displaystyle W = Fxより \displaystyle \lbrack J \rbrack = \lbrack N \rbrack  \cdot \lbrack m \rbrack,また,運動方程式 \displaystyle F = maより \displaystyle \lbrack N \rbrack = \lbrack kg \rbrack \cdot \lbrack m / s^2 \rbrackであり, \lbrack J \rbrackの式に \lbrack N \rbrackを代入すると \displaystyle \lbrack J \rbrack = \lbrack kg \rbrack \cdot \lbrack m / s^2 \rbrack \times \lbrack m \rbrack = \lbrack kg \rbrack \cdot \lbrack m^2 / s^2 \rbrack,整理してルートを取って \displaystyle \sqrt{\frac{\lbrack J \rbrack}{\lbrack kg \rbrack}} = \sqrt{\lbrack m^2 / s^2 \rbrack} = \lbrack \sqrt{m^2 /  s^2} \rbrack = \lbrack m / s \rbrackという風に変換することが出来ます。

大問4 分子の励起

(1)換算質量

2原子以上で構成されている分子を考えるとき,換算質量という概念を用いると,1原子の粒子のように扱うことが出来て,便利になります。換算質量 \displaystyle \muは,原子の質量 \displaystyle m_1,もう一方の原子の質量 \displaystyle m_2としたとき以下のように表されます。

 \displaystyle \mu = \frac{m_1 m_2}{m_1 + m_2}

和分の積と覚えるとよいでしょう。

今回は,どちらの粒子も N原子なので,原子質量単位 \displaystyle u \displaystyle \,^{12}C \displaystyle \frac{1}{12}の質量   \simeq \displaystyle \,^1 Hの質量)を用いて \displaystyle m_1 = m_2 = 14 uとなります。代入すると,

 \displaystyle \mu = \frac{14u \cdot 14u}{14u + 14u} = 7 u

あれ uがいくつなのか与えられてないじゃん,と思ったんですが水素原子は陽子(プロトン)と電子(エレクトロン)それぞれ一つずつで構成されているので,プロトンの質量 \displaystyle m_pエレクトロンの質量 \displaystyle m_eとしたとき, \displaystyle u = m_p + m_eが成り立ちます。よって,換算質量 \displaystyle \muは,

 \displaystyle \mu = 7 \times \left(m_p + m_e \right) = 7 \times \left( 9.11 \times 10^{-31} + 1.67 \times 10^{-27} \right) \lbrack kg \rbrack 
 \displaystyle =  1.169 \times 10^{-26} \lbrack kg \rbrack

となります。有効数字は3桁なので,仮数部分(小数のところ)は四捨五入して1.17になると考えましたが,教授の解答では1.16になっていたので,切り捨て処理をしたと判断し,この記事もそれに準拠し答えを \displaystyle 1.16 \times 10^{-26} \lbrack kg \rbrackとします。

(2)合成慣性モーメント

分子の合成慣性モーメント \displaystyle Iは,換算質量 \displaystyle \mu,結合距離 \displaystyle Rとして以下のように表せます。

 \displaystyle I = \mu R^2

接頭語に気をつけて代入すると,

 \displaystyle I = 1.16 \times 10^{-26} \lbrack kg \rbrack \cdot (110 \times 10^{-12} \lbrack m \rbrack)^2 = 1.403 \times 10^{-46} \lbrack kg \cdot m^2 \rbrack

となります。

また,このような計算問題では前問で算出した数値は有効数字より1桁余分にとって計算(具体的には, \displaystyle \mu = 1.16 \times 10^{-26}ではなく,  \displaystyle \mu = 1.169 \times 10^{-26}として計算)するのが通例ですが,なぜか計算が合わない(仮数部分が1.415になりました)ので,ここでも教授の解答をベースに \muには(1)の答えをそのまま代入したものと考え,さらに仮数部分1.403を切り捨てした \displaystyle I = 1.40 \times 10^{-46} \lbrack kg \cdot m^2 \rbrackを答えとします。

(3)(4)励起状態にある分子の存在比率

ある励起状態にある分子の存在量の比率は,存在する確率の比率と等しいです。つまり,方位量子数 l = lの状態をとる確率を \displaystyle P_lとすると,

 \displaystyle \frac{N_l}{N_0} = \frac{P_l}{P_0}

です。また, \displaystyle P_lは,ボルツマン因子 \displaystyle exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} \right)に比例します。

 \displaystyle P_l \propto exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} \right)

また方位量子数 \displaystyle lの粒子は,磁気量子数 \displaystyle m \displaystyle -l \leq m \leq lの範囲の \displaystyle 2l + 1個の整数値を取ることが許され,これをスピン多重度とよびます。 \displaystyle P_lはスピン多重度にも比例します。

 \displaystyle P_l \propto 2l + 1

これらに分配関数 \displaystyle Z = \sum_{n=0}^{\infty} exp \left(-\frac{E_n}{k_B T} \right)の逆数をかけると, \displaystyle P_lになります。

 \displaystyle P_l = \frac{ \left(2l + 1 \right) exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} \right)}{Z}

スピン多重度に \displaystyle \frac{exp \left( - \frac{E_l}{k_B T} \right)}{Z}がかかると確率になる理由のちゃんとした説明はこちらの記事がわかりやすかったです。

分配関数Zの意味。例を使って確率と期待値を求める。 | ばたぱら

以上の議論をまとめると,以下のようになります。

 \displaystyle \frac{N_l}{N_0} = \frac{P_l}{P_0} = \frac{\frac{ \left(2l + 1 \right) exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} \right)}{Z}}{\frac{ \left(2 \cdot 0 + 1 \right) exp \left(-\frac{E_0}{k_B T} \right)}{Z}} = \frac{ \left(2l + 1 \right) \, exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} \right)}{exp\left(-\frac{E_0}{k_B T} \right)}

 \displaystyle = \left(2l + 1 \right) exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} + \frac{E_0}{k_B T} \right)

問題文より, \displaystyle E_l = \frac{l \left(l + 1 \right) \hbar^2}{2 I}なので,

 \displaystyle \left(2l + 1 \right) exp \left(-\frac{E_l}{k_B T} + \frac{E_0}{k_B T} \right)  = \left(2l + 1 \right) exp \left( -\frac{l \left(l + 1 \right) \hbar^2}{2 I k_B T} \right)

となるので,これが(3)の答えです。

(4)は,(3)より, \displaystyle \frac{N_l}{N_0} = \left(2l + 1 \right) exp \left( -\frac{l \left(l + 1 \right) \hbar^2}{2 I k_B T} \right)なので, \displaystyle l = 10,T = 300 \lbrack K \rbrackボルツマン定数  \displaystyle k_B = 1.38 \times 10^{-23} \lbrack J / K \rbrack ,\hbar = \frac{6.626 \times 10^{-34}}{2 \pi} \lbrack J \cdot s \rbrack
 \displaystyle = 1.054 \times 10^{-34} \lbrack J \cdot s \rbrackと(2)の答えを代入し,注意深く計算できれば正解することが出来ます。計算すると, \displaystyle \frac{N_{10}}{N_0}

 \displaystyle \left(2 \cdot 10 + 1 \right) exp \left( -\frac{10 \left(10 + 1 \right) \left( 1.054 \times 10^{-34} \lbrack J \cdot s \rbrack \right)^2}{2 \cdot 1.40 \times 10^{-46} \lbrack kg \cdot m^2 \rbrack \cdot 1.38 \times 10^{-23} \lbrack J / K \rbrack \cdot 300 \lbrack K \rbrack} \right)
 \displaystyle = 7.31...

となるので,誤差を丸めて答えは \displaystyle 7.3となります。

大問5 ヘルマン-ファインマンの定理

やることが分かっていれば一本道ですが,文字がいっぱいでてくるので計算が大変です。また,小問がなく部分点が入る箇所がなさそうなのもこわいです。

 

ヘルマン-ファインマンの定理は以下の式で表されます。

 \displaystyle \frac{dE(\lambda)}{d \lambda} = \langle \Psi_{\lambda} \left| \frac{d\hat{H}(\lambda)}{d \lambda} \right| {\Psi_{\lambda}} \rangle

この式は,「エネルギー演算子を好きな文字 \lambda微分したものの期待値は,エネルギー固有値をさっき決めた好きな文字 \lambda微分したものに等しい」という意味です。式でみるより,言葉での説明をみたほうが理解しやすいと思います。

この問題においては,波動関数 \Psi_{\lambda}は問題文にある通り一電子固有状態についてのものなので, \displaystyle \langle \Psi_{\lambda} |= \langle nlm | と, \displaystyle | {\Psi_{\lambda}} \rangle = | nlm \rangleが成り立ちます。また,今知りたいのは, \displaystyle \langle \frac{1}{r} \rangleであり,これは \displaystyle \langle nlm | \frac{1}{r} | nlm \rangleと等しいです。よって,なんとかしてブラケットのまんなかの部分を \displaystyle \frac{1}{r}にしてやればよく,また期待値の線形性( \displaystyle \langle nlm | \frac{2}{r} | nlm \rangle = 2 \, \langle nlm | \frac{1}{r} | nlm \rangle, \langle nlm | \frac{3}{r} | nlm \rangle = 3 \, \langle nlm | \frac{1}{r} | nlm \rangle という風に,任意定数 aについて \displaystyle \langle nlm | \frac{a}{r} | nlm \rangle = a \, \langle nlm | \frac{1}{r} | nlm \rangleが成り立つこと)より,定数倍はあとからかけたりわったりすることで調整がきくので,ブラケットのまんなかに \displaystyle \frac{a}{r}というかたちを残せればよいことがわかります。この形にできるように逆算していきましょう。

ハミルトニアン(エネルギー演算子)をよくみると,第2項の分母に rがありますね。よって,微分された後は,ハミルトニアンの第1項は残っておらず,第2項に rが逆数として残っている形が理想です。これより,微分する文字 \lambdaとして \hbar,m,rは不適切であり, Z,e,\pi,\varepsilon_0のいずれかが適していることがわかります。この中の文字ならどれで微分してもよいので,ハミルトニアンとエネルギー固有値を見てみて一番微分がしやすそうな Z微分することにしましょう。

いま, \lambda = Zとしてヘルマン-ファインマンの定理を適用すると,

 \displaystyle \frac{dE(Z)}{d Z} = \langle nlm \left| \frac{d\hat{H}(Z)}{dZ} \right| nlm \rangle

となります。 \displaystyle \frac{dE(Z)}{d Z} \displaystyle \frac{d\hat{H}(Z)}{dZ}を計算すると,

 \displaystyle \frac{dE(Z)}{d Z} = \frac{d}{dZ} \left( -\frac{m e^4 Z^2}{32 \pi^2 \varepsilon^2 \hbar^2 n^2} \right) = -\frac{m e^4}{32 \pi^2 \varepsilon_0^2 \hbar^2 n^2}\frac{d}{dZ} Z^2
 \displaystyle = -\frac{m e^4 Z}{16 \pi^2 \varepsilon_0^2 \hbar^2 n^2}

 \displaystyle \frac{d\hat{H}(Z)}{dZ} = \frac{d}{dZ} \left( -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 - \frac{Ze^2}{4 \pi \varepsilon_0 r} \right) = 0 - \frac{e^2}{4 \pi \varepsilon_0 r} \frac{d}{dZ} Z
 \displaystyle = - \frac{e^2}{4 \pi \varepsilon_0 r}

となりました。ヘルマン-ファインマンの定理の式に代入すると,

 \displaystyle -\frac{m e^4 Z}{16 \pi^2 \varepsilon_0^2 \hbar^2 n^2} = \langle nlm \left| - \frac{e^2}{4 \pi \varepsilon_0 r} \right| nlm \rangleとなり,先ほどの期待値の線形性より \displaystyle  \langle nlm \left| - \frac{e^2}{4 \pi \varepsilon_0 r} \right| nlm \rangle = - \frac{e^2}{4 \pi \varepsilon_0} \langle nlm \left| \frac{1}{r} \right| nlm \rangleと変形できるので,

 \displaystyle \left( -\frac{m e^4 Z}{16 \pi^2 \varepsilon_0^2 \hbar^2 n^2}\right) \cdot \left( - \frac{4 \pi \varepsilon_0}{e^2} \right) = \langle nlm \left| \frac{1}{r} \right| nlm \rangleとすることができます。左辺を計算すると,

 \displaystyle \langle nlm \left| \frac{1}{r} \right| nlm \rangle = \frac{Z e^2 m}{4 \pi \varepsilon_0 \hbar^2 n^2}

ボーア半径 \displaystyle a_0 = \frac{4 \pi \varepsilon_0 \hbar^2}{m e^2}より,

 \displaystyle \frac{Z e^2 m}{4 \pi \varepsilon_0 \hbar^2 n^2} = \frac{Z}{\frac{4 \pi \varepsilon_0 \hbar^2}{m e^2} \cdot n^2} = \frac{Z}{n^2 a_0}となり,これは \displaystyle \langle nlm \left| \frac{1}{r} \right| nlm \rangleであり,同時に \displaystyle \langle \frac{1}{r} \rangleでもあるので,この問題の答えは \displaystyle \frac{Z}{n^2 a_0}であるとわかりました。